血圧計と脳梗塞の予後
こんにちは。すぎおかクリニック院長、杉岡です。
今日は、血圧計と脳梗塞の予後についての話です。
最近の論文に、血圧計のカフを使って上腕の圧迫を繰り返すことで脳梗塞の予後が改善する可能性が示されました。
『Safety and efficacy of remote ischemic postconditioning after thrombolysis in patients with stroke』
遠隔虚血ポストコンディショニング
これは、遠隔虚血ポストコンディショニングと呼ばれています。
治療の目標臓器(脳)から離れた部位の血管の血流を短時間遮断し(遠隔虚血し)、それを解除することを繰り返すというやりかたです。
これによって、ダメージを受けた脳組織のダメージが減らせるのではないか?というものなのです。
この研究では、脳梗塞で入院している68人(平均年齢65歳)を2群に分類。一方には遠隔虚血ポストコンディショニングを施行しました。
方法は、血圧計のカフを両腕に巻き、5分間の圧迫と3分間の解除を計40分間繰り返すという方法で、これを入院期間中1日2回行っています。
この結果、脳梗塞の予後評価として頻用される「修正ランキンスケール(mRS)」が良好な点数の割合がこの方法を使ったグループのほうが良かったのです。
また、脳損傷のマーカー(S100β)や血管内皮増殖因子(VEGF)の数値も良好でした。
この結果から、研究者らはこの方法が意義あるものとコメントしています。
遠隔虚血ポストコンディショニングは本当に有効か?
一方でこんな論文も出ています。
こちらは脳梗塞を発症した188人(平均67.2歳 98人が男性)が調査の対象となりました。
188人のうちの半数に、上肢ではなく、下肢の虚血コンディショニングを通常の治療に追加しました。
評価項目は脳梗塞の体積、90日後の機能や生命等の経過だったのですが、遠隔虚血ポストコンディショニング治療を行っても明らかな硬化は得られなかったのです。
血圧計を使っての血管機能の改善
現時点では、脳梗塞に関しての遠隔虚血ポストコンディショニングの効果はまだ一定の見解が得られていない、と考えても良いかと思います。
ただ、この2つの論文は評価項目が違うので、このやり方で生命予後までの改善は得られないものの、脳梗塞後の機能回復や内皮機能という観点では効果があるのかもしれません。
血圧計で血流を止め、数分後に回復させることを行うと、血管の内皮細胞というところからNO(一酸化窒素)という物質が放出されます。
NOは、血管機能を回復させ、若返らせる上で非常に有効と言われています。
私達は、脳梗塞を起こす起こさないに関わらず、血圧計を測って血流を遮断させることを日常的に行うことにも意義があるのではないか?と個人的には考えています。
ある意味、加圧トレーニングに似ているともいえますね。
当院は心臓血管病などの循環器疾患や高血圧、糖尿病などの生活習慣病に力を入れています。
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