血圧とは、簡単に言えば血液が血管の壁に与える圧力のことです。血液を心臓がポンプの機能として送り出す時、心臓はぎゅーっと縮こまり、その時血圧は最大限まで上がります。これを収縮期血圧呼びます。そして、心臓が拡張していく際、血液が心臓に戻っていきますが、この時の血圧を拡張期血圧と呼びます。 血圧はちょっとしたことで簡単に変動します。例えば、体を動かす運動、暑さや寒さを感じるなどの気温や気圧の変化、イライラや緊張。しかし、こうした一時的な緊張は高血圧とは呼びません。高血圧症とは、安静時の血圧が持続的に高い状態を指します。 血圧が高い高血圧の状態になると、体の中ではどんなことが起きるのでしょうか?血圧が高いと、血管の中では勢い良く血液が流れ続け、過度に血管は収縮と拡張を繰り返します。そして血管の中は常に高い圧力がかかっています。それが血管への負担になってしまいます。負担がかかった血管には傷がつき、傷を修復していく過程で硬くなっていきます。これを動脈硬化と言います。
血圧が高いだけでは、ほとんど症状がありません。高血圧症がサイレントキラー(静かなる殺し屋)と呼ばれる所以です。ですから、大事なことは定期的に自分で血圧を測る習慣(家庭血圧)を身につけることです。そして、血圧が高いな、と思ったら早めに内科もしくは循環器内科の病院を外来受診することをお勧めします。当院には、船橋市をはじめ習志野市鎌ヶ谷市、市川市等にお住まいの多くの高血圧患者さんが来院されています。お気軽に受診してくださいね。
家庭血圧はとても大事です。というのも、健康診断や病院、クリニックで測った血圧があなたの本来の血圧ではないことが多いからです。いわゆる白衣性高血圧です。家庭血圧を測る際にはいくつかのお勧めポイントがあります。
まずは、毎日できるだけ同じ時間に測ること。これにより、日々の変化や暑さ寒さなどの季節の変化に伴う、自分自身の血圧変動を容易に調べることが可能になります。
次のポイントは、毎日の血圧をぜひとも記録しておいていただきたいということです。我々内科医、循環器内科医が高血圧の患者さんを診察する際に、家庭血圧を知る、ということはとても参考になります。診察室で血圧を測るとどうしても高くなってしまう、いわゆる白衣性高血圧の患者さんに対して、治療が必要なのかどうか、日頃の生活習慣をどう指導すべきか、など家庭血圧をもとに的確な話をすることが可能になるからです。そして不必要な薬の処方などもしないで済むようになります。
そしてもう一つ、特に朝に血圧を測っていただくと、その情報は非常に参考になります。というのも、高血圧のかたに対して薬を処方した場合、そのほとんどは朝食後に内服(飲む)するタイプのものです。朝、薬を飲んだ後に病院に来院、その時に測った血圧が正常、コントロールが良好だったと仮定します。それは処方されているお薬が良く効いている証拠と言えます。しかし、朝に飲んだお薬が翌日の朝に効果が切れてしまっていることがあります。その場合は、朝の薬を飲む前の血圧がとても高いことがあるのです。これは早朝高血圧と呼ばれ、動脈硬化や脳卒中などのリスクを高めると言われています。
今や家庭血圧は病院での診察の参考資料にとどまりません。あなたなお血圧を最適な数値にするうえで、必要不可欠な情報と言えるのです。
さて、血圧が高いと一体どんなことが起きるのでしょうか?実は、多くの病気は血圧が高いことが原因で起こります。そしてそのおおもとは、動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、全身の大きな血管から微小血管と呼ばれる小さな血管まで、全身のさりとあらゆる血管が硬く、狭く、変形していきます。そして最終的には詰まったり、破裂したり、場合によっては死に至る可能性もあるものなのです。
例えば、頭や首の血管が詰まれば脳梗塞や痴呆の原因になることも。心臓の血管が詰まれば心筋梗塞。網膜にある目の血管が詰まれば視力低下や失明。大動脈が破れたら大動脈解離。腎臓の血管が詰まれば腎不全や透析。足の血管が詰まれば壊疽や下肢の切断になってしまう人もいます。
特にこれらの合併症は、高血圧に高コレステロールや高中性脂肪、糖尿病や喫煙、そして内臓脂肪増加に伴う肥満(メタボリックシンドローム)などが合併すると急速に進行していきます。
では、血圧の適正値とは幾つなのでしょうか?日本高血圧学会が発表している「高血圧治療ガイドライン2014」では血圧と危険因子の数による心血管リスクの差を報告しています。危険因子とは、メタボリックシンドローム(脂質、血糖、肥満)や心血管病の既往、慢性腎臓病などです。
心血管リスク | Ⅰ度高血圧 収縮期血圧140-159 拡張期血圧90-99 |
Ⅱ度高血圧 収縮期血圧160-179 拡張期血圧 100-109 |
Ⅲ度高血圧 収縮期血圧 180以上 拡張期血圧 110以上 |
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リスク第1層 (危険因子なし) |
低リスク | 中リスク | 高リスク |
リスク第2層 (危険因子1〜2個) |
中リスク | 高リスク | 高リスク |
リスク第3層 (危険因子3個以上) |
高リスク | 高リスク | 高リスク |
このように、心臓血管病の危険が高ければ高い人ほど、適正血圧を低く保つ必要が出てきます。これに年齢やその人の生活状況などが加味されていきます。このように自分の適正血圧がどれくらいであるべきなのかは個人差があります。わからないことがあれば、早めにかかりつけ医や内科、循環器内科の医師に外来受診、相談されてみてください。
血圧管理は、メタボリックシンドロームや生活習慣病と深く関わっています。ですから、高血圧の治療は、何よりもまずは生活習慣の見直しが大切です。塩分の取りすぎに注意すること、食べ過ぎ飲み過ぎなどを控える、しっかり睡眠をとる、タバコを吸わない、定期的な運動を欠かさない、適正体重を維持するなどです。これらをしっかり行ってもなおかつ血圧が高ければ、初めて薬物治療ということになります。
高血圧の薬にはたくさんの種類があります。一番多く医師に処方されている薬がおそらくカルシウム拮抗剤というグループの薬だと思います。その他にACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、高圧利尿薬、α(アルファ)ブロッカー、β(ベータ)ブロッカー、最近はこれらの配合剤(複数の効果のある薬を1つの錠剤にまとめてあるもの)など挙げられます。それぞれの薬にはそれぞれの効果と副作用が存在します。どの薬をどの程度の量飲む必要があるのか、ひょっとしたら自分にはこの薬は合っていないのではないか?など不明な点があれば遠慮なく医師にお聞きください。もちろん、当院でもご質問があればこれらの説明をしっかりとさせていただきます。
高血圧の行く末は動脈硬化による病気です。脳卒中や心筋梗塞などがその代表的なものです。高血圧のかたは、自分の血圧を適正に保つのは当然のことですが、それと同時に動脈硬化度を検査で定期チェックする必要があります。例えば、脳梗塞の多くが首の血管の詰まりから起こります。そこで首の動脈(頚動脈)の超音波(エコー)検査で首の動脈の動脈硬化のチェックを行います。心筋梗塞や心不全の予防のためには心臓の動きを見る心臓超音波(エコー)検査や心臓に負荷をかけて心臓の予備能力を調べる運動負荷心電図を行います。そして、全身の血管のかたさや血管年齢、特に手足の血管に詰まりがないかを調べるためにCAVI検査を行います。CAVI値は、動脈硬化が進行している人ほど高い数値を示します。一般的にCAVI値は8以下が正常、9以上が動脈硬化、その間は境界値と考えられています。